乳化剤は危険な食品添加物なのか?アレルギーの人は注意すべきか
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「乳化剤」という食品添加物は、コーヒーやパン・麦茶・チョコレートにと…さまざまな食品に入っていますよね。
その「乳化剤には危険性があるのか」という疑問を多くの方から聞きますが、真相はどうなのでしょうか?
ここでは「乳化剤とは何か」「どのような食品添加物なのか」というところから「乳化剤に懸念されるアレルギー・危険性・害」までを詳細にお伝えしてきますので、これをきっかけとして「乳化剤」について正しく理解し、日々の食生活に役立ててみてください。
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乳化剤とは
本来であれば混ざり合うことのない「水」「油」などの境界面において、均一な状態をつくりあげるという「乳化」の働きをする「乳化剤」ですが、「食品・食べ物」に限らず、「化粧品」「洗剤」などにも「界面活性剤」と別名で幅広く使用されている食品添加物となります。
このように、「乳化剤」の主な用途は「乳化」ですが、その他にも「分散」「可溶化」「起泡」「消泡」「洗浄」「湿潤」といった用途でも姿を見せますので、ここで各働きについて詳しく見ていくことにしましょう。
乳化
「乳化剤」において最も基本となる用途がこの「乳化」であり、「水」「油」の互いの「液体粒子」が混ざり合って調和した状態をつくります。
ただし、「乳化剤」は微量の添加量で全体へと均一に成分を分散させるという働きを担う必要があることから、一般的に2種類の「親水性乳化剤(水中で油が粒子となる)」「親油性乳化剤(油中で水が粒子となる)」を選択・組み合わせることで、多様で複数成分の「食品」に対応しています。
【「乳化」作用の主な食品・食べ物例】
- 「親水性乳化剤」=アイスクリーム・乳飲料(牛乳など)・クリーム系(生クリームなど)など
- 「親油性乳化剤」=マーガリン・バターなど
分散
「乳化剤」の「分散」とは、「水」「油」それぞれの中で「固体粒子」は均一に溶け渡っている状態のことです。この「分散」においても、「水系」「油系」の二手に分かれます。
【「分散」作用の主な食品・食べ物例】
- 「水系」=ココア(粉末ココアを液体化=分散したドリンクタイプ)など
- 「油系」=チョコレート(粉末ココアに油脂であるカカオバターや砂糖と混ぜて固体化=分散した固形タイプ)など
可溶化
「乳化剤」の「可溶化」とは、「乳化剤」によってつくり出される「ミセル溶液」の中へと安定的に「水」「油」を加え、「水」「油」に溶けにくいとされているものを「まるで透明で溶けたかのような状態」にする働きのことを言います。
通常の「乳化」の場合、「光波長」と比較して「分散する粒子」のサイズが大きくて白く濁ったかのように目に映りますが、「分散する粒子」が「光波長」よりも小さなサイズと変形することで「光の反射」が消えるため、「透明」に見えるようになるのです。
【「可溶化」作用の主な食品・食べ物例】
食品・食べ物に使用される油性香料を飲料水(水系)に混ぜるなど(麦茶なども該当する)
起泡
「乳化剤」の「起泡」とは、「空気」と「液体」の境界面において、液体表面をなるべく小さくしようとする性質を低下させ、双方の接触面積を拡大することです。
これにより、「泡」が生じやすくなるとともに、その「泡」が破れにくくなる膜を生成することで「泡ボリューム」を維持することができます。
【「起泡」作用の主な食品・食べ物例】
- アイスクリーム
- スポンジケーキ
- パン
- ホイップクリーム
消泡
「乳化剤」の「消泡」とは、その名の通り「泡」を消すこと・液体状に「泡」が生じるのを予め防ぐことです。「消泡」の働きによって「泡立ち」を抑え、食品・食べ物そのものの滑らかさを保つことができます。
【「消泡」作用の主な食品・食べ物例】
- ジャム
- ドリンク飲料(麦茶など)
- 豆乳による豆腐・醗酵物
湿潤
「乳化剤」の「湿潤」とは、「粉末タイプの食品・食べ物」などの濡れにくいとされる物(固体)の表面を「水」などの液体に濡れやすくし、ダマなどをつくりにくくする働きのことです。
その他、チューインガムなどの「練り物」にも使用することで、「練り物」の表面に「親水性のある膜」をつくり、私たちの「歯」に付着することを防いでくれます。
【「湿潤」作用の主な食品・食べ物例】
- チューインガム
- 粉末タイプの食品
滑沢
「乳化剤」の「滑沢(かったく)」とは、対象となるものの表面に光沢を与えつつ、粉末状の原料が使用する機械などに付着することを防ぐことで、「ツヤ」と「滑らかさ」をつくる働きのことを言います。
【「滑沢」作用の主な食品・食べ物例】
- 菓子類(タブレット・錠剤タイプの菓子など)
- サプリメント
- 薬類
離型
「乳化剤」の「離型」とは、食品・食べ物をつくるときに使用する「型」から離しやすくする働きのことです。
【「離型」作用の主な使用例】
練り製品・焼き菓子の型から菓子本体を取り出しやすくするなど
洗浄
「乳化剤」の「洗浄」とは、その名の通り対象となる物の汚れを洗い流すことです。「低刺激で安全」という性質の特徴から代表的なものとしては、「衣類用洗剤」「石鹸」などが挙げられます。
【「洗浄」作用の主な使用例】
- 化粧品類
- 洗剤(食品工業・衣類用)
- 石鹸
代表的な乳化剤の種類
レシチン
「乳化剤」の中でも天然添加物にあたる「レシチン」は、「植物レシチン(アブラナや大豆由来のもの)」や「卵黄レシチン(卵黄から抽出されるもの)」などが主成分である、最も代表的な「リン脂質」のことを言います。
よく「乳化剤(大豆由来)」との食品表示を目にすることがあるかと思いますが、これは、「大豆由来」の「植物レシチン」を「乳化剤」として用いているということです。
これらには「乳化」「分散」「湿潤」「油はねの防止」の効果があり、最近では高度な機能の「レシチン」を原料とした「健康食品」なども販売されていますし、「レシチン」の中でも「酵素分解」をするものは特徴である「親水性」を活かし、「澱粉(でんぷん)」「たんぱく質」に作用して品質改良することができるとされています。
【「レシチン」配合の主な食品・食べ物例】
- 麺類・アイスクリーム・調製粉乳・菓子類など
- マーガリン・マヨネーズなど(乳化安定)
- パンなど(乳化分散)
※「マヨネーズ」は、配合される「卵黄」そのものが「乳化」の働きをするため、「乳化剤」を使用している商品は「マヨネーズ」として表記することが許可されていません。
グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド・グリセリンエステル)
「グリセリン」「脂肪酸」でつくられる「植物性油脂」を分解することによって、再度化学反応することでつくられるものが、「グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド・グリセリンエステル)」。
活用範囲が広いことや安価であることもあり、「乳化剤」の約半数を占める「グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド・グリセリンエステル)」は、「乳化」「分散」「起泡」「消泡」「湿潤」「澱粉(でんぷん)食品の改質」など多くの働きをします。
世界中で最も古くから存在していることからも読み取れるように、安全性が高いことも特徴です。
【「グリセリン脂肪酸エステル」配合の主な食品・食べ物例】
- 麺類・パンなどの澱粉を含む食品・食べ物(改質)
- 生クリーム・コーヒークリーム・マーガリンなど(乳化安定)
- チョコレート・チューインガムなど(分散)
- アイスクリーム(生地)・ケーキなど(起泡)
- 豆腐など(消泡)
有機酸モノグリセリド
「モノグリセリド」に「酢酸・クエン酸・乳酸・ジアセチル酒石酸・コハク酸」が結合したものが、「有機酸モノグリセリド」です。
【「有機酸モノグリセリド」の主な使用例】
- 「クエン酸モノグリセリド」=油脂などの酸化防止剤補助剤(耐酸乳化作用)
- 「コハク酸モノグリセリド」=パン生地調整剤(たんぱく質・澱粉へ働き)
ショ糖脂肪酸エステル
「甘味料」としての歴史が長い「ショ糖」と「低級の脂肪酸(イソ酪酸・酢酸など)」や「高級な脂肪酸(オレイン酸・ステアリン酸・パルミチン酸など)」などの食用油脂による「脂肪酸」の双方を反応させることでつくられる「ショ糖脂肪酸エステル」は、無味無臭で環境に優しく、安全性の高い「乳化剤」です。
他の「乳化剤」と比較して「親水性」「親油性」との許容バランス範囲が大きいため、「食感改良」「粘度調整」「澱粉(でんぷん)の老化防止」としても使用されています。
【「ショ糖脂肪酸エステル」配合の主な食品・食べ物例】
- ホイップクリーム・コーヒークリーム・プロセスチーズなどの乳製品(乳化安定)
- 清涼飲料水のビタミン・香料など(可溶化)
- ケーキなど(起泡)
- チョコレートなど(ブルーミングを防ぐ)
ソルビタン脂肪酸エステル
「海藻類」や「果物(イチゴ・梨・りんごなど)」に数%含まれている「ソルビトール(糖類)」と食用油脂由来の「脂肪酸」を脱水した「ソルビタン」を反応させることでできる「乳化剤」が、「ソルビタン脂肪酸エステル」です。
「ソルビタン脂肪酸エステル」は単独ではなく、他の「乳化剤」とともに使用されますが、性能・規格は各メーカー・ブランドによって異なります。
【「ソルビタン脂肪酸エステル」配合の主な食品・食べ物例】
- アイスクリーム・乳飲料(乳化安定)
- チューインガム・清涼飲料水
- ショートニング・クリーム類におけるクリーミー度のアップ
プロピレングリコール脂肪酸エステル
「食用油脂」と「プロピレングリコール」を分解することでつくられるものが「プロピレングリコール脂肪酸エステル」ですが、製法としては「交換」と「エステル化」の2種類があります。
中でも、風味良く仕上がるのは「交換」によるものです。
この「プロピレングリコール脂肪酸エステル」も単独では使用されず、その他の「乳化剤」の「性質向上・改良」の働きを期待されています。
【「プロピレングリコール脂肪酸エステル」配合の主な食品・食べ物例】
- 加工製油脂(改質)
- ケーキなど(起泡)
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(ポリグリセリンポリリシノレート)
「ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル」は、「ポリグリセリン」と「縮合リシノレイン酸」を「エステル結合」されることでつくられ、「耐熱性」「耐塩」「耐酸」に優れた性質を持つ「乳化剤」です。
尚、「縮合」とは、2つ以上の同一の分子や異分子によって新たに結合することを言います。
【「ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル」配合の主な食品・食べ物例】
- マーガリン・鉄板油など
- チョコレート(粘度の低下)
ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンエステル)
「グリセリン」同士を「脱水縮合」したものが「ポリグリセリン」にあたりますが、さらに「脂肪酸」を「エステル結合」したものが「ポリグリセリン脂肪酸エステル」です。
「脂肪酸の種類」「グリセリン重合具合」「エステル結合数」によって「親水性」「親油性」まで幅広く対応することができるため、「乳化」「可溶化」「起泡」「消泡」「コーティング(滑沢)」「澱粉(でんぷん)食品の改質」「生地の調整」「油脂における結晶の調整」「日持ちの向上」「洗浄」など、多くの用途に使い分けることができます。
乳化剤によるアレルギーや危険性・害
乳アレルギーとの関係
「乳化剤」の原料となるものは「大豆」「卵黄」「海藻」「ショ糖」と多様ですが、含有量は微量であるため、アレルギーに関して特に大きな問題はないとされています。
ところが、アレルギーが重度である場合は、「大豆」「卵黄(卵)」が原因となってアレルギーの発作を引き起こしてしまう恐れがありますので、常に商品パッケージ裏面などに記載されている「原材料名の表示」を確認するようにしましょう。
尚、「乳化剤」は主に「水・油を混ぜ合わせる」ことを目的としているため、基本的には「乳アレルギー」とは関係ありません。
危険性・害
プロセスチーズなどの「チーズ類・乳製品」に含まれる「乳化剤」には、「リン酸塩」が使用されていることがありますが、この「リン酸塩」を過剰に摂取すると、「骨粗しょう症」「乳幼児・成長期の子どもたちの発育障害」「腎機能低下」(カルシウム吸収抑制作用による)をはじめとする「副作用・害」を被る危険性があります。
また、「乳化剤」の中でも「植物レシチン」の原料である「大豆」が使用されている場合は、「発がん性」「内臓機能障害」が懸念される「遺伝子組み換え」によるものが含まれていることも考えられるため、注意が必要です。
ところが、「乳化剤」という食品添加物は「原材料を一括で表示すること」が認められているため、これまでお伝えしてきた「乳化剤の種類」をいくつ使用したとしても「乳化剤」と一言でしか記載されないことが大半であり、私たち消費者がその核心を捉えることは決して簡単ではありません。
このように、原材料表示だけでは「リン酸塩」などの使用具合も不明確ですから、「乳化剤」と記載のある食品・食べ物を過剰に摂取することには気をつけるようにしてください。
まとめ
いかがでしたか?
ご紹介してきた通り、私たちの身近な食品・日用品には多種多様な「乳化剤」が使用されていますが、そのひとつひとつに含まれる量は微量であり、軽度のアレルギーであれば発症する危険性はかなり低いでしょう。
ですから、「乳化剤が入っているかた危険だ!」と、一方的に恐れる必要はありません。
ただし、過剰摂取となると話は別になってきますので、その点には注意してください。
それでも、「チョコレートもパンもアイスクリームもチーズもすごく好きなのに、乳化剤がどうしても心配でしょうがない…」というような方には、「乳化剤不使用」で販売されている「チョコレート」「パン」「アイスクリーム」「チーズ」「麦茶」がおすすめです。
※
「乳化剤とイーストフード」の違いについて気にしている方がいるとのことですが、「イーストフード」は「パン酵母の栄養源で不足しやすいものを補うことで醗酵を手助けするもの(パン生地改良とパン酵母の発育の促進)」であり、「乳化剤」の働きとは内容が全く異なります。
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